・・・おかしい。
このひらけた道を抜ければそのまま隣町に出られるはずなのである。
もう三刻ほど歩いているが一向に出口は見えず、どうも同じところを歩いているような気がする。
「う〜ん、やっぱ受けるんじゃなかったかな・・・」
シェリル・リーンはポツリとボヤいた。
ここはとある街の郊外にある暗き森。
ここ数年の間にこの森で女性が神隠しにあう事件が多発していた。以来女性がこの森を抜けることはタブーとされてきた。
とはいえ隣町に行くには避けて通れない森でもある。
そこで男の護衛をつける事を前提として通行を許可していたが、それでも娘が消えるという現象は後を絶たなかった。少しでも目を離すと消えているのである。
そして今年に入ってまたもや犠牲者が出てしまった。それもまだ年端もいかない少女である。花摘みに夢中になっているうちに迷い込んでしまったようだという。
事態を重く見た人々は腕利きと名高いシェリルに依頼した。
華奢な容姿に似合わず金になるならばどんな事でも請け負う彼女。やっていないのは盗みや理にかなわない殺しくらいのものである。
そんな彼女も流石に先の見えない迷宮のような森の中にはいささか焦りの色が見え始めてきた。
「どうもダンジョン系って苦手なのよね〜2ヶ月前の大蟻狩りの時だって巣穴から三日間でてこれなかったし・・・でもこの依頼が終われば五千両!そしたら大蜥蜴の蒸し焼きでしょ?オークの豚足でしょ?それからそれからぁ〜♪」
・・・なんとも能天気である。
とはいえ、状況が変わることはなく次第に日は暮れ始めてきた。ただでさえ暗い森をさらに漆黒の闇が覆い尽そうとしている。
「ふえぇ〜?こんなトコで野宿か・・・やだな〜」
慣れているとはいえ、女一人での野宿は心細い。
ましてや抜けられる保証の無い森の中ではなおさらである。
そうこうしているうちに、いつのまにか羽虫がわいて目の前を飛び回りはじめた。ただでさえ不安だというのに、それらの出現でさらに苛立ちは募る。
「あ゛〜もう、うっと〜しいな!」
愛刀であるシャムシールの柄でブンブンと払い除けるがそれらは素早い動きでかわしながら、更にまとわりついてくる。
突然そのうちの一匹が顔の前に飛び出してきた。
「ひっ!?」
羽虫と思っていたそれは・・・明らかに人間の少女の姿をしていた。
御伽話にでてくるような妖精であった。
フェアリーなど初めてみる彼女はそのまま尻餅をつく。
「な、なんなのコイツ〜?」
「出口」「出口」「出口」・・・
「こっち」「こっち」「こっち」・・・
知能はそれほど高くないようだが髪や装具をしきりに引っ張ってくる。
「ふ〜ん、このコ達ここの住人なのかな?まあ案内してくれるみたいだし案外イイ奴なのかも♪」
ようやくこの場所から出ることができるとあって少し安心したシェリルは彼女たちに身を任せる事にした。
「こっち」「こっち」「こっち」・・・
「ごちそう」「ごちそう」「ごちそう」・・・
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